「児童虐待・子育て支援」について

2010.4.22

○高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 本日は、四人の先生方に大変貴重な御意見を賜りまして、心より感謝申し上げます。

 先ほど来、長期的な視点で、親育てまた子育て支援等々を、インフラの整備も含めまして、どのようにしていくのか。また、社会的養護のあり方等々、社会を挙げてどのように支えていくか。また一方で、今をどうしていくか。先ほど宮島先生から指摘がありましたとおりだと思っております。

 我が党も児童虐待の防止に向けまして、池坊座長を中心に、検討会そしてまた視察等を重ねてまいりました。その中から、何点か質問をさせていただきたいと思います。

 まず、私も、子どもと子育てを社会全体で支える、この理念で取り組ませていただいております。そこには、一つは経済的支援、また、もう一つは相談を含む基盤の整備ということが当然あるかと思います。この両輪がなくてはなりません。先般も、あの「こうのとりのゆりかご」を視察に行かせていただきまして、その中から、現在の出産、子育てをめぐるさまざまな課題を突きつけられた思いでございます。取り組んでいらっしゃる慈恵病院の先生方にも、私は胸を打たれながら、お話を聞かせていただきました。こうした課題に適切に対応することが虐待防止にもなりますし、また、そうした社会のはざまに落ちていく子どもたちをすくい上げ、支えることにつながると考えております。

 そこで、まず妊娠期からの子育て支援という御指摘がありました。母子保健法と児童福祉法をつなげてはどうだという柏女先生の御指摘でございます。私どもも、妊婦健診から始まり、そして相談支援、また子ども家庭支援センターの設置など、本当に数え切れない政策に取り組んでまいりました。

 ただ、一方で、もう一つおくれていると思っているのが、性をめぐる、これは本来命と健康を守るための教育であるわけですが、こうした部分はまだまだ取り組まなければいけないと思っております。こうしたことが妊娠期からの子育て支援に総合的に求められると思っております。

 まず、柏女先生にお伺いしたいのですが、母子保健法と児童福祉法をどのようにつなげていくか、ここに対するもう一歩踏み込んだ御意見をいただきたい。

 それから、私は慈恵病院でシェルターを各地に配備してはどうかという報告書の概要版も読ませていただきまして、このことにつきましては、例えば東で一つ、西で一つとか、こうして順次進めていくことが必要なのではないか。

 しかし、その前に、今、慈恵病院で取り組んでいらっしゃる二十四時間の電話相談、これはすばらしいなと私は思いました。若い女性の方たちが、特に中学生、高校生が、思いもかけない妊娠を告げられた、また自分でわかった、そのときにどこに相談するかといいますと、センターなんか恐らく行けません、夜中、自分一人になって不安になったときに、電話相談というのが最も有効ではないかということを改めて病院で教えていただいたという思いがございます。

 こうしたことを総合的に含めまして、妊娠期からの子育て支援につきまして柏女先生に教えていただきたい。また、このテーマにつきまして御提言いただけるようでしたら、宮島先生、高橋先生、須藤先生に御意見を順次賜りたいと思います。

○柏女参考人 二点の御質問をちょうだいいたしました。

 一点目は、母子保健法と児童福祉法の根本的な理念の違いにあると思います。母子保健法は、妊娠、出産を基本的には喜ぶ人たち、その方のための仕組みということになるかと思います。やはり世の中には、妊娠そのものを素直に喜べないという方がいらっしゃいます。そういう方々に対しては、児童福祉法は、子どもが虐待されていれば介入する仕組みがありますけれども、妊娠中の方に対して介入し支援するという仕組みはつくられておりません。

 そこで、私たちはこの乖離を埋めなければならないということで、ハイリスク家庭や特定妊婦の通告制度、あるいは医療機関から市町村への妊娠、出産の届け出制度、それらを導入していく、そしてそれをこんにちは赤ちゃん事業などに結びつけていく必要があるのではないか、そうしたことを提案させていただいています。それが一点目として、この思いがけない妊娠への相談対応ということが大事ではないかというふうに思っています。

 それは、委員御質問の二点目のところにもつながってくることになるわけですけれども、実は国の方の施策でも、この思いがけない妊娠等についての相談事業は行われております。「ゆりかご」検証会議でも全国調査をさせていただきましたけれども、かなりのところで行われているわけですが、慈恵病院が行っていることの特徴というのは、病院が行っているというところです。単に電話相談だけではなく、そこで緊急対応ができるということが大きな違いではないかというふうに思っています。この「ゆりかご」を設置することによって、慈恵病院の電話相談が一挙に二十数倍に膨れ上がっています。全国からの相談が寄せられています。それは、まさにこうした危機対応を伴っているからこそ、相談が寄せられているんだというふうに思っています。

 以上でございます。

○高橋参考人 妊娠時からの子育て支援ということに関連して、産経新聞に「なぜわが子を傷つけるのか」という連載が五日続きましたが、私はそれを読んでおりまして、一カ月の長女に対して、「おぎゃーという泣き声がめちゃめちゃむかついた。「こんなに世話しているのに、どうしてあんたばっかり要求してるの」という気持ちになっていた」というようなことがずっと書いてございました。

 きょう私が申し上げた退行期ですね。二十カ月までに、赤ちゃん返りという、むずかる時期がある。それは脳の発達上意味があることであって、親に原因があってそうなっているわけではないんだ、つまり、子どもの発達段階についての科学的知見。そして、その発達段階に応じてどうかかわったらいいかということについての科学的知見。

 例えば、これは教育再生会議の第二次報告でございますが、なぜ二歳までにテレビとかテレビゲームを見過ぎたらいけないか。それは、コミュニケーション能力とか、あるいは対人関係能力とか、言葉のおくれというものにつながるんだという根拠が示されております。

 そういうことをできるだけ早い時期に、つまり、妊娠中の母親からそういう科学的な知見をお伝えしていくことが、例えば乳幼児健診時とかさまざまな中で行っていくことが大事ではないかと思っております。

○宮島参考人 ありがとうございます。

 相談というのは本当に大事なものだと思います。電話の相談はアクセスのしやすさとして本当に大事だと思います。実際、これに対応する仕組みとして、さまざまな民間団体が各都道府県、自治体でも活動しておりまして、そこで、二十四時間の相談事業等を行っている例もかなりあります。また、それをネットワークで結ぼうというような動きもありますし、全国の児童相談所が共通の電話番号を設けまして、近くの児童相談所に連絡が入るという仕組みがとられています。こういったものを充実することはとても重要だと思います。

 虐待をする親はSOSを出さないという固定観念がありますけれども、深刻な虐待をしている、命に危ない虐待をしている三割の方がSOSを求めているという調査結果が出ております。

 あと、もう一つ大事なことは、きちんとした相談の形がとれないけれども、何らかの形でSOSを出している人たちを、例えば、文句をつける、クレームをつけるということの中に、実はSOSとして受け取るべきものがあったりします。それを受けとめることがとても重要だと、ちょっと余計になってしまいましたけれども、一方で考えております。

○須藤参考人 私も多くの退園生を送り出しているんですけれども、子どもたちの特徴を言いますと、まず、相談できないですね。電話をもらって、いろいろ相談できるところがあるんだよというふうに言っても、寮長先生に相談したいんだ、寮母さんいないのと。だれでも相談できる、そこまで育っていないですね。また、子どもたちは、幼児期に受け入れてもらった経験がないものですから、何が一番怖いかというと、人に聞いて拒否されることというふうに言います。

 と同時に、子どももそうですけれども、保護者の方も非常に社会的に孤立している方が多いので、親子ともどもきちんと向き合っていくような体制が必要かと思います。幾ら情報を流しても耳に入れない方もいるということも私たちは受けとめなくちゃいけないというふうに現場では思っております。

○高木(美)委員 ありがとうございます。

 続きまして、特別養子縁組につきまして柏女先生にお伺いをさせていただきます。

 この特別養子縁組につきましては、先般、赤ちゃんポストを伺いましたときも、インターホンを押せばこちらの道が開ける、ポストに預けてしまえば、「ゆりかご」の方に赤ちゃんを預けてしまえば施設の方の道になってしまうという、これは熊本から始まって、また、国としてもしっかりと応援している事業ではありませんので、さまざまな、そういう宙に浮いた形で、もうやむを得ない、折り合いをつけながら進めている、そうして取り組んできてくださった事業と私は認識しております。大変感謝をしております。

 ただ、特別養子縁組につきましても、既に要件として、父母の同意ということにつきましても、原則として同意が必要であるけれども、行方不明、心神喪失など、父母がその意思を表示することができない場合、また、父母による虐待、遺棄など、子の利益を著しく害する事由がある場合はこの同意は不要であるというのが民法の八百十七条の六に書かれていると思います。

 あるにもかかわらず、恐らく現場の運用がこのような形になっていないのかどうか、その点も含めまして教えていただきたいと思います。

○柏女参考人運用の問題と、それから制度的な問題と、二点あろうかと思います。

 まず、制度的な問題としては、今委員御発言の行方不明の期間が一体どのくらいあればいいのかといったようなところが、余りしっかりと判例が積み重ねられていないのではないか。これも運用といえば運用かもしれませんけれども、それが一つあるかと思います。

 したがって、公的機関である児童相談所としては、いつあらわれて、また親たちはメッセージを「ゆりかご」に残しているわけで、それらを考えますと、いつ出てくるかわからないというようなことがあるとヘジテートしてしまうということはあろうかと思います。

 もう一点は、今の児童相談所の、全国的な動向にも近いかもしれませんけれども、やはり乳児院等で一定の養育をした上で里親委託あるいは特別養子縁組をするということがかなり行われているということがあると思います。

 先駆的には、愛知県がいわば新生児里親委託の実践を行い、そして、新生児から、つまり、愛着関係を里親や養子縁組を前提とする方と最初の段階でつくっていこう、早目にそれをつくっていこうということを実践して成果を挙げています。そうした先駆的な実践にも学びながら研究を重ねていくことが大切なのかなというふうに思っています。

○高木(美)委員 ありがとうございます。

 続きまして、里親支援につきまして伺わせていただきます。

 宮島先生はスウェーデンの例を書類でおつけいただきました。先ほどずっと読ませていただきました。スウェーデンのバリシューですね。この訪問の例なんですが、ここと日本を比較いたしまして、なかなか進まないこの里親制度、あと残り、どういうところが必要か、その点につきまして御指摘をいただければと思います。

○宮島参考人 日本で里親委託が進まない根本的な理由の一つとして、里親制度が養子縁組の準備の期間である、あるいは里親制度と養子縁組が混同されてきたというところがあると思います。

 里親制度は、もともと施設と同じように、親御さんとパートナーシップを結んで一緒に子育てをするという制度です。それがそう理解されていない。ですから、熊本のこの例でも、親にかわって養育する。親と一緒でいいんですね。発見されても、親と一緒に育ててもいいはずです。そういった運用がされていない。

 スウェーデンのこの記事を読みますと、まさに実親とともに子育てをするという制度だという位置づけがされています。ここに根本的な違いがあるというふうに思います。親と対立するのではなくて、実親とパートナーシップを結んでいくという前提の中で里親制度を組み立てていかなければ前進はない。

 里親委託されている子どもの七〇%以上は、実親との面会、交流が全くない子どもです。日本では、親と縁が切れた子どもしか里親委託をしていない、そこに現状の問題点があると考えております。

○高木(美)委員 ありがとうございます。また、もう少し勉強をさせていただきたいと思います。

 時間が迫ってまいりまして、最後の質問になるかと思いますが、御存じのとおり、児童相談所の機能につきましては、もうパニックを超えているという状況です。先ほど来、宮島先生からも、社会福祉士等の専門家をしっかりと配置すべきというお話もあり、先般、私もこの委員会におきまして、スクールソーシャルワーカー等も含めまして提案をさせていただいたところです。

 例えば、二〇〇七年の法改正におきましても、虐待する親の面会とか、また通信も制限できるというふうにさせていただいておりますが、一方で、児童相談所は親子関係の修復に努めるという姿勢があります。当然これを進めなければいけない。しかし、また一方で、親と対立をしながら、要するに親子関係を、一時期その親権停止をしながら引き取っていくというようなことも両方しなければいけない。そもそもそこに大きな無理があるのではないか。

 先ほど来御指摘がありますように、虐待の対応で、本来であれば虐待を受けた子どものその先であるとか、また須藤先生からも、本来であれば児童自立支援施設に入っているお子さんたちをこれからどうしていくか、そういうことがなかなかできていないという御指摘があります。ここはもう少し地域でネットワークをつくりながら、支えながら、機能をある程度特化していくということも必要ではないかと思います。

 千葉の、六カ所、七カ所だったでしょうか、いわゆる権利擁護センターのような形で、NPOが委託を受けて、そしていろいろな家庭を総合的に見ていく。例えば高齢者、またそこにいらっしゃる御両親が精神的な障害を持っていらしたり、そこのお兄さんは働いていないとか、また下のお子さんが虐待を受けているとか、要するに、よく家庭を見ていかなければいけないというところを常時やっているというようなところもあります。

 こうした地域の力をどうかみ合わせながら進めていくか。先ほどもこのように分断されているという御指摘もありましたけれども、そうした総合的な児童相談所を支えるシステムというのをどのように今後考えていけばいいのか。大変大きなテーマが最後に、短いお時間の御回答で大変恐縮でございますけれども、何か御指摘をいただければと思いますので、もしよろしければ、順次一言ずつお願いできますでしょうか。

○池坊委員長 それでは、時間も限られてございますので、簡潔にお願いしたいと思います。

○柏女参考人 今委員御指摘のように、児童相談所がすべてを担っている、あめとむちの両方の体制をすべて担っているという問題点があるかと思います。児童相談所はケアマネジメントを中心にし、そして具体的なプログラムを遂行するのはNPOでやったりするということが大事だろうというふうに思います。  また、司法との役割分担も大事ではないかというふうに思っております。

○高橋参考人 私は、人づくりというものが一番大事だと思っておりまして、その人づくりをどう進めていくか、研修をどう進めるか、その辺に重点を置いた取り組みが必要だと思っております。

○宮島参考人 柏女先生と同じように、児相だけではだめだと思います。さまざまな機関が共同してやらなければならない。そのためには、ケアマネジメントに児相は特化すべきだ。ケアマネジメントの一番重要なところはアセスメントと言われています。その親子、家族がどういう状態なのかをきちんとつかまえる力がなければだめだと思います。市町村も要対協等の調整機関になっていますが、この二カ所にきちんとアセスメントができる状態をつくらなければならない。  ネットワークは大事ですが、情報を共有するそのもともとの情報が間違っていればみんなが間違えます。ちゃんと見立てができる職員を置くということが結果的には全体の力量アップになりますし、軽減になると思います。

○須藤参考人 私は先ほどお話しさせていただきましたけれども、非行と虐待は両輪である。虐待をきちんと初期対応しないと非行につながるケースもありますし、非行の対応をきちんとしないと、十代で母親になる、父親になる方も多いですので、両輪であるという認識が必要と思います。

 それから、退園した後の児童のアフターケアについては、先ほど言ったように、要保護児童対策地域協議会をぜひ活用して、必要な支援をみんなで見ていく、非行は社会的な責任である、そういう認識が必要かと思います。

○高木(美)委員 ありがとうございました。

 最後に、須藤先生からお話がありました公設民営化につきましても、しっかりと勉強をさせていただきたいと思っております。

 本日は、大変貴重な御意見をちょうだいいたしまして、ありがとうございました。今後の審議に必ず私も反映をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

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